脱毛症というと、多くの人々が悩む一方で、まだまだ治療法については確立されていない領域です。
こうした中、近年注目されているのが、血小板豊富な血漿(PRP:Platelet-Rich Plasma)という治療法です。
PRP療法は、自己の血液を用いて血小板を集め、それを髪の毛の成長が必要な部位に注射することで、髪の毛の再生を促進しようとするものです。
そんなPRP療法の有効性について研究されたのが、今回ご紹介する「新規及び改良された血小板豊富な血漿(PRP)療法の比較:システマティックレビューとメタアナリシス」という論文です。
この論文では、PRP療法を単独で使用した場合と、他の治療法と組み合わせて使用した場合の2つの状況における、髪の毛の密度の改善効果を比較しています。
その結果、単独でPRP療法を行った場合も、他の治療法と組み合わせて行った場合も、どちらもプラセボ(偽薬)と比較して髪の毛の密度が顕著に改善されることが示されました。一方で、単独のPRP療法と他の治療法との組み合わせ療法とを比較した場合、統計的に有意な差は見られなかったとのことです。
この結果から、著者たちは単独のPRP療法が男性型脱毛症の治療法として有効であると結論づけています。
一方で、他の治療法との組み合わせ療法については、まださらなる研究や異なる組み合わせ療法の試験が必要であるとしています。
脱毛症は生活の質(QOL)に大きく影響を及ぼすだけでなく、精神的なストレスももたらします。その治療法の一つとして注目されているPRP療法ですが、今回の研究結果を通じて、その有効性が再確認され、さらなる研究が推奨される一方で、PRP療法と他の治療法との組み合わせについては、まだまだ試行錯誤の段階であることがうかがえます。
参考文献:
Fatima, Kaneez, et al. “Novel vs. modified platelet-rich plasma therapy for hair loss treatment: a systematic review and meta-analysis.” Annals of Medicine and Surgery 85.6 (2023): 2833.