今回紹介する論文は、イスラエルにおける円形脱毛症(alopecia areata, AA)の発生率に関する15年間の人口ベースの分析を行い、特に若い成人男性が最もリスクが高いグループとして浮上していることを報告しています。
研究の概要:
- この研究は、イスラエルの大規模な医療機関で行われた後ろ向きの人口ベースの研究です。
- 2005年から2019年の間にAAを診断された30,805人の患者が分析され、合計29,504,798人年のデータが収集されました。
- 全体の発生率は、100,000人年あたり104.4件でした。
- 若年成人と中間社会経済状態の患者が、全体のコホートと比較して最も高い発生率を示しました。
- 女性の発生率は男性より低く、発生率比は0.72(95%信頼区間0.71-0.74)でした。
- 研究期間を通じて、全体のコホートにおける年間発生率は安定していました。
- しかし、18歳から30歳の男性では、発生率が年々増加し、100,000人年あたり119.54件から162.36件に増加しました。
研究の限界:
- 病状の重症度や他の個人データによるサブグループの分析が行われていない点が限界です。
重要な発見と考察:
- この研究は、若年成人男性、特に中間社会経済状態の者が過去15年間にAAのリスクが最も高いグループとして浮上したことを示しています。
- 男性と女性の間のこのジェンダーギャップのリスク要因を明らかにするため、異なるストレス要因がトリガーとして推測されています。
この論文は、円形脱毛症の発生傾向とリスクグループに関する重要なエビデンスを提供し、特に若年成人男性の健康管理における注意を促しています。また、今後の研究において、ジェンダー差を考慮したリスク要因の解明が必要であることを示唆しています。
引用文献
Wohl, Yonit, et al. “Incidence rate of alopecia areata in Israel: A 15‐year analysis of population‐based data and the emergence of young male adults as the most at‐risk group.” The Journal of Dermatology 51.1 (2024): 88-94.