筋肉損傷と脱神経

今回こちらの論文を読み記事を書きます。

BENJAMIN T.CORONAらによって執筆された「IMPACT OF VOLUMETRIC MUSCLE LOSS INJURY ON PERSISTENT MOTONEURON AXOTOMY」についてです。

Volumetric Muscle Loss(筋肉の体積喪失,以下VML)は重大な外傷または外科的手術後に発生します。

VMLは不可逆的な体積の消失、機能喪失をしばしば引き起こします。

VML損傷は神経筋ユニットを破壊し、結果として組織の除神経を引き起こすことはあまり知られていません。

筋肉の外傷性の損傷による喪失はさまざまな神経成分が失われるのです。

神経成分とは筋肉内神経、筋線維への神経支配、運動ニューロン-筋線維シグナル伝達栄養因子が含まれます。

VML損傷に対する筋肉内神経、末梢神経に関する研究はまだ十分に行われていません。

今回筆者は神経の軸索切断を定量化し、VML損傷との関係を明らかにしました。

今回の研究ではラットを使用しTibialis Anterior Muscle(前脛骨筋(以下TA))を対象としています。

モーターニューロンにあらかじめコレラ毒素サブユニットB(CTB)を注射し神経を同定、ラベリングできるようにします。

イソフルランにて全身麻酔を行い6mmのパンチバイオプシーを使用しTAの中央1/3に欠損を作成しました。

筋力の測定デバイスを使用し、最大等尺性トルクを解析、そして画像の解析と同時に組織的解析も行っています。

結果としてはVML損傷後、筋肉の線維数は21日後、52%減少しました。

VML損傷の21日後57-59%の軸索切断後認められました。

機械的能力は3日、7日、14日、21日時点で大幅に減少しました。

機械的能力の低下は3日後で90%減少、21日目の時点でも46%減少が認められました。

VML損傷は予想通り、筋繊維を傷つけるだけでなく、筋肉内および末梢神経と血管系を損傷させます。20%以下の小範囲の筋肉欠損でも不均等な運動のダメージを発生させることがわかったと筆者は述べています。

これらの結果を見ると、やはり小範囲の筋肉の損傷でも容易に脱神経が行われていることを裏付けています。我々の臨床経験と一致します。

外傷後、コンパートメントシンドロームの臨床兆候が出てきた時点ではもう遅く後遺症が出現してしまいます。少しでも疑われれば内圧を測定し緊急で対応する必要があります。

コンパートメントシンドロームは筋肉の損傷というよりは血流や神経へのダメージを主に来している可能性がありそれにより後遺症が残存する結果となっているのであると考えます。

参考文献:

Corona, B. t. (2018). IMPACT OF VOLUMETRIC MUSCLE LOSS INJURY ON PERSISTENT MOTONEURON AXOTOMY. MUSCLE & NERVE57(5), 799–807. doi:10.1002/mus.26016.

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