機械的刺激と筋肉再生

今回の記事はこちらの論文についてです。

School of Engineering and Applied Sciences, Harvard University

のCezarらによって執筆された「Biologic-free mechanically induced muscle regeneration」を読みました。

機械的刺激により筋肉が再生するという記事です。

骨格筋は人体の大部分(40-50%)を構成し運動、姿勢のサポート、呼吸に重要な役割を果たします。

軽症には再生能力を有しています。

しかし20%を超える筋肉量の減少をもたらす重症は広範な線維化と筋肉機能の喪失につながります。

交通事故や腫瘍切除などから生じる外傷は一般的に起こっていることです。

重度の骨格筋損傷を治療するための治療戦略の開発は非常に重要です。

骨格筋修復への典型的な現在のアプローチは、筋肉の再生を促進するために成長因子や細胞などの生物学的製剤に依存しています。

昨今の衛星細胞を調整する因子の特定により有益な生体製材の開発につながりました。

筋原性(IGF,FGF-2,HGF)および血管新生因子(VEGF)等が有用と言われています。

しかしながらそれらはまだ開発途上です。

筋肉の伸展刺激はグルコースの再取り込み、衛星細胞の活性化が示されています。

機械的刺激は、骨格筋再生への単純でありながら効果的なアプローチを提供する可能性があります。

筆者らは重度の損傷した骨格筋が機械的刺激により再生することを仮説としています。

磁気応答性物質(フェロゲル)をこの実験では使用しています。

外部から磁石によって駆動される二相性フェロゲルをマウスの後肢に埋め込むことにより機械的刺激を実現します。

この実験ではミオシンによる筋肉の直接的な損傷と下肢虚血を行いマウスで筋肉損傷モデルを作成しています。

マウスの筋肉損傷モデルは二相性フェロゲルをラットの後肢に埋め込みと永久磁石を外部から当て筋肉を直接機械刺激しました。1Hzで5分間、12時間ごとに行っています。

対象の条件として圧力カフ、二相性フェロゲルのみ、磁場のみを加えています。

Result

炎症に関して:

二週間後に二相性フェロゲル群では無治療群と比べて有意に線維化や炎症性浸潤物が少ないという結果でした。

血流に関して:

9日目では二相性フェロゲル群の血流が無治療群と比較し多いという結果でしたが、14日目では差は認められませんでした。

収縮力に関して

これが一番の結果です。

2週間の時点で無治療群と比較し

二相性フェロゲル群:2.6倍

圧力カフ群:2.2倍

という結果でした。

Discussion

生物製剤を含まないフェロゲルは炎症反応に影響をもたらし、線維性被膜の暑さの減少をもたらしました。

驚くべきことに機械的刺激は損傷した筋肉の線維症と炎症の優位な減少をもたらしました。

組織学的検査では二相性フェロゲルによって活発な筋肉の再生が確認されています。

さらに損傷した筋肉の酸素濃度を一次的に増加させました。

二相性フェロゲル刺激は2週間後に周囲の筋肉の存在する線維性被膜の厚さと炎症性細胞の減少をもたらします。

これはフェロゲルの周期的な圧縮の結果として炎症性細胞の排出に関連している可能性があります。

周期的な機械的圧迫は、組織を通る対流または損傷した下肢への血流の一時的な増加をもたらす可能性があります。

組織の圧迫によって引き起こされる筋肉内対流が酸素レベルの上昇と再生を阻害する代謝副産物の迅速な除去につながっている可能性があります。

また今回の実験で周期的な機械的圧迫は有意な機械的筋肉再生をもたらした。

二週間後、二相性フェロゲル群および圧力カフ群が無治療ぐんと比較しそれぞれ2.6倍、2.2倍であった。

この研究結果はフェロゲルを使用して成長因子や細胞を使用せず、機械的に刺激および筋肉再生を促進されることを示唆されました。

さらに既存の薬物および細胞伝達システムへの周期的な機械的圧迫は、強化された再生結果を生み出す新しい組み合わせ療法につながる可能性があると筆者は最後に述べています。

以前の記事で適切な炎症環境は筋肉再生を促進するという論文について記事を書きました。

やはり重度の筋肉損傷では炎症過多になってしまう傾向が強いので、炎症を抑える必要があるということがわかりました。機械的圧迫は非常に簡便で臨床応用も行いやすいです。今後、人にも使われる日が来る日も近いかもしれません。

参考文献

Biologic-Free Mechanically Induced Muscle Regeneration. (2016). Proc Natl Acad Sci U S A .113(6), 1534–9. doi:10.1073/pnas.1517517113

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