今回はJournal of Orthopedic Translationより筋肉の再生と炎症についてのレビューです。
こちらの論文を読み、参照し記事を書きます。筋肉の再生と炎症の関係についてです。
筋肉は体重の約40%程度を占めます。
筋肉は日常的に様々な損傷を受けます。筋肉損傷の一番の原因は機械的外傷です。
これは筋形質膜と基底膜の完全的な破壊があると、細胞外カルシウムの流入をもたらし最終的に筋肉タンパク質の分解と壊死を引き起こすのです。
急性炎症の活性化の結果として筋肉は変性と腫脹、血腫の形成が促進されます。
最初の筋肉変性の後、筋肉幹細胞によって媒介される筋肉再生が引き起こされるのです。
負傷した筋線維は、再生し、収縮力、新陳代謝などの筋肉機能を回復させることができます。
筋肉幹細胞について
筋肉幹細胞(衛星細胞)は筋肉の再生に大きく関わります。
これらの細胞は筋鞘と筋線維を取り巻く基底膜の間の膜で囲まれたニッチという部分にあります。
運動、外傷、その他の刺激に応答して、筋肉幹細胞が活性化されて損傷した筋線維に融合して筋肉の損傷を修復するのです。
筋肉幹細胞を活性化し、筋肉幹細胞の増殖と分化を適時に促進するメカニズムはまだはっきり調べられていません。
メカニズムを理解するためには筋肉の損傷や筋肉の変性疾患の再生治療の開発を促進します。
炎症と筋肉再生の関係について
急性炎症は筋肉壊死段階から再生段階への転換を誘発します。
急性炎症と免疫細胞は、筋肉再生のほぼ全ての段階で重要な役割を果たします。
炎症と筋肉再生に関するフェーズ
フェーズ1
初期段階(好中球、肥満細胞)
筋肉再生の初期段階で、損傷した筋肉細胞は外傷により壊死します。
筋肉が損傷すると細胞の内容物と走化性因子が細胞外空間に放出され、免疫細胞を誘発します。
肥満細胞や好中球などの免疫細胞は、損傷部位でダメージを受けた筋線維を取り除くことを行います。
損傷後の筋肉再生の初期段階の主なイベントには、筋線維の壊死、病変の拡大、破片の除去などがあります。
免疫細胞の最初の波は筋肉再生の初期段階で起こります。
免疫系は、筋肉病変部位の損傷した線維からの細胞破片と細胞内容物の漏出によって活性化されます。
フェーズ1 補体系
補体系は筋肉損傷の最初のセンサーとして機能します。
損傷した筋肉の補体系の活性化は、病変部位への好中球とマクロファージの浸潤を引き起こす。
フェーズ1 肥満細胞
肥満細胞の脱顆粒は、負傷した筋線維の周囲の領域でしばしば観察されます。
筋肉が損傷すると骨格筋に存在する肥満細胞が急速に活性化されます。
活性化後、肥満細胞は脱顆粒し、炎症性サイトカインを放出するのです。
フェーズ1好中球
好中球は様々な因子を放出し筋肉の代謝を促進します。
好中球由来の活性酵素は虚血再灌流障害によって誘発される筋線維の劣化と血管の変化に寄与することが示されています。
フェーズ2
マクロファージとT細胞
筋肉再生の第二段階は、筋肉幹細胞の活性化と拡大によって特徴づけられます。
この段階は適応免疫の活性化と免疫細胞の第二の浸潤を伴います。
フェーズ2 マクロファージ
マクロファージは損傷直後に好中球によって筋肉損傷部に動員されます。
マクロファージは骨格筋再生の調節において中心的な役割を果たすのです。
フェーズ2 TNF-α
TNF-αは筋肉の再生に重要な役割を果たすと報告されています。
TNF-αは筋肉の損傷部位に筋肉幹細胞を引き付け、シグナル伝達を活性化することによって筋肉幹細胞の増殖を促進します。
フェーズ2 IL-6
IL-6は、マクロファージ、T細胞、筋線維を含む複数の細胞型によって産生されます。
IL-6は筋芽細胞の移動、増殖、分化を刺激することができるのです。
フェーズ2 T細胞
T細胞は、免疫細胞浸潤の第二波で出現する主要な細胞集団でサイトカインを大量に産生します。
T細胞によって分泌されるサイトカインと成長因子が、筋肉の再生を促進すると言われています。
フェーズ3
炎症誘発性免疫細胞から抗炎症性免疫細胞への切り替えが行われるフェーズです。
この段階での主要なイベントは、筋幹細胞の分化と新しく形成された筋線維の成熟です。
フェーズ3 M2マクロファージ
IL-4,IL-10,IL-13などの抗炎症サイトカインを産生し、局所炎症反応を抑制します。
筋幹細胞が分化するのを促進し、筋肉形成と再生を促進します。
慢性筋障害の炎症について
慢性の炎症は筋肉再生にとってマイナスの影響を示し慢性筋疾患で観察されます。
急性筋損傷では、自己限定的な生理学的急性炎症反応が関与し、持続性の慢性炎症は、進行性の筋消耗を特徴とし、あらゆる慢性筋疾患で観察されます。
結論
免疫細胞は、様々な筋肉への刺激により動員され、炎症誘発性環境から抗炎症性切り替えを行い筋肉再生の促進、拡大を行うのです。
また様々なサイトカイン、成長因子、酵素を分泌することにより壊死した細胞の除去を行い微小環境の改善を行います。
上記が内容でした。
筋肉再生にとって免疫細胞による適切な炎症反応が重要であることが記載されています。
我々は筋トレを行い、休ませるということが筋肥大に有効であるということを習慣的に知っています。筋肉が損傷、そして免疫反応により適切な炎症反応、抗炎症反応を引き起こし筋肥大が行われるのです。
また再生という概念において炎症は必要ですが過度な炎症はマイナスの作用に働くということがわかります。