小児における経口ミノキシジルの安全性と有効性:システマティックレビュー

ミノキシジルは、1970年代に重度の難治性高血圧の治療薬として開発されました。しかし、高血圧治療中の患者で予期せぬ発毛効果が見られたことから、1987年には男性型脱毛症(Androgenetic Alopecia: AGA)治療用の外用薬として開発されました。最近では、低用量経口ミノキシジル(Low-Dose Oral Minoxidil: LDOM)が成人の脱毛症治療に人気を集めていますが、小児への使用に関してはまだ慎重な姿勢が見られます。

小児における脱毛症は、単に身体的な症状だけでなく、心理的にも大きな影響を与える可能性があります。これまで、小児の脱毛症に対する効果的な治療選択肢は限られていました。LDOMは新たな治療オプションとして期待されていますが、その安全性と有効性については十分な検討が必要です。

今回、Archives of Dermatological Research誌に掲載された研究[3]では、小児におけるミノキシジルの使用に関するシステマティックレビューが行われました。この研究の主な内容と結果について解説します。

研究の概要

  • 対象:0〜18歳の小児
  • 方法:PubMed、Embase、Scopusを用いたシステマティックレビュー
  • included:41の研究(症例報告19、コホート研究10、後ろ向きチャートレビュー7、ケースシリーズ5)
  • 総患者数:442人

患者群の特徴

  • 性別:女児257人(60.3%)、男児169人(39.7%)
  • 年齢群:乳児(0-23ヶ月)、小児(2-12歳)、思春期(13-18歳)
  • 使用理由:
    • 脱毛症(83.9%、371/442)
    • 高血圧(11.3%、50/442)
    • 偶発的使用(4.8%、21/442)

用量別の結果

  1. 低用量(≤ 2.5 mg/日)
    • 373人の患者データ
    • 安全性:
      • 最も多い副作用は多毛症(12.1%)
      • 低血圧(5.6%)、頭痛(2.1%)、肝機能検査値上昇(1.9%)など
      • 副作用による中止例なし
    • 有効性:
      • 多くの患者で毛髪密度の改善と脱毛の減少
      • 一部の患者では状態の安定化のみ
  2. 中用量(2.6-15 mg/日)
    • 42人の患者データ
    • 安全性:
      • 多毛症/多毛(66.7%)
      • 心膜滲出(9.5%)
      • 反射性頻脈、末梢性浮腫(各7.1%)
  3. 高用量(15.1-135 mg/日)
    • 27人の患者データ
    • 安全性:
      • 多毛症/多毛(77.8%)
      • 心膜滲出(14.8%)
      • 浮腫(11.1%)

考察

この研究結果から、低用量経口ミノキシジル(LDOM)は小児の脱毛症治療において有望な選択肢となる可能性が示唆されました。副作用の発生率が低く、重篤な副作用も報告されていないことから、安全性が高いと考えられます。

一方、中用量および高用量のミノキシジルは、主に高血圧治療に使用されていましたが、多毛症の発生率が大幅に上昇し、心膜滲出などのより重篤な副作用も報告されています。これらの結果は、用量が増加するにつれて副作用のリスクも高まることを示唆しています。

結論

低用量経口ミノキシジル(LDOM)は、小児の脱毛症治療において安全で効果的な選択肢となる可能性があります。しかし、中用量および高用量の使用に関しては、安全性の懸念が残ります。

小児におけるミノキシジルの使用、特に脱毛症治療での使用については、さらなる研究が必要です。医療提供者は、個々の患者の状況を慎重に評価し、潜在的なリスクとベネフィットを十分に検討した上で、治療方針を決定する必要があります。

引用文献

本ブログの内容は、以下の論文を参考にしています:

Williams KN, Olukoga CTY, Tosti A (2024) Evaluation of the Safety and Effectiveness of Oral Minoxidil in Children: A Systematic Review. Dermatol Ther (Heidelb) 14:1709–1727. https://doi.org/10.1007/s13555-024-01197-x

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