黒潮大蛇行、ついに終息の兆し — 7年9か月の記録的影響とは?

このブログの広告収益は全額、日本赤十字社に寄付されます。





黒潮とは?

黒潮はフィリピン沖から日本の南岸に沿って流れる強い暖流です。幅100km以上、深さは1000mにも達し、流速は秒速2mを超えることもあります。この黒潮は、日本の気候、漁業、そして沿岸の生態系に大きな影響を与える存在です。


黒潮大蛇行とは?なぜ起こるのか?

黒潮が通常の流れから大きく南へ外れ、紀伊半島や東海沖で蛇行する現象を「黒潮大蛇行」と呼びます。気象庁の定義では、黒潮が潮岬から離れ、東海沖で北緯32度より南に位置して安定する流れです。

大蛇行の主な原因は、黒潮がぶつかる地形的な要因、渦(冷水塊や暖水塊)の発生、黒潮自体の流量や勢力の変化にあります。特に、黒潮の勢い(流量)が弱まったときに、冷水塊が安定して本州沖にとどまり、これを回避するように黒潮が南へ迂回する形になります。

また、大蛇行は黒潮の上流域(フィリピン沖〜台湾付近)の渦活動や海面水温の変化、太平洋全体の気圧配置の影響も受けているとされ、発生の予測は非常に難しいとされています。


黒潮大蛇行の発生履歴

以下の表は、1965年以降に観測された黒潮大蛇行の発生と終息の記録です:

発生年終息年継続期間備考
1975年8月1980年3月約4年8か月過去最長記録(当時)
1981年5月1984年2月約2年9か月比較的長期の安定蛇行
1986年12月1988年5月約1年5か月短期間で終息
1989年12月1990年9月約9か月再発的蛇行の一環
2004年7月2005年8月約1年1か月最も短い大蛇行
2017年8月2025年5月?約7年9か月観測史上最長

2017年〜2025年:観測史上最長の大蛇行

2017年8月に始まった今回の大蛇行は、実に7年9か月も続きました。これは観測史上最長であり、全国の気象や漁業に大きな影響を与えてきました。大蛇行が安定していた理由のひとつは、黒潮の勢力が弱く、冷水塊が本州沖にとどまりやすい状態が続いていたことにあります。

また、黒潮の下流である黒潮続流が異常に北上し、2023年には東北〜北海道沖にまで達するなど、日本周辺の海洋環境もこれまでにない様相を呈していました。


2025年5月:終息の兆候とその背景

気象庁は2025年5月、黒潮大蛇行が見られなくなったと発表しました。その要因は、紀伊半島沖で維持されていた冷水渦(U字型の冷水塊)が分離・崩壊し、黒潮が本州沿岸に接近して流れ始めたためです。黒潮が再び潮岬に接岸し、東海沖で南下せずに東向きに流れるパターンに戻りつつあります。

ただし、同様の状態は2020年10月にも一度観測され、その後大蛇行が再発しています。このため、完全に終息と判断するには今後3か月程度の継続的な観測が必要とされています。


黒潮大蛇行による主な影響

  • 漁業資源
    • ブリやカンパチなどの暖水性魚種が関東・東海沿岸で豊漁。
    • 一方で、シラスやイセエビ、アワビなどは黒潮の離岸により不漁となる地域も。
  • 海水温・海況
    • 黒潮が接岸する地域では高水温。
    • 離岸した地域では冷水塊の影響で海水温が低下。
  • 気象への影響
    • 東海・関東での豪雨の頻度上昇や猛暑の一因と指摘。
    • 北日本でも海洋熱波の発生や気温の異常高温が観測。
  • 沿岸生態系
    • 磯焼けの進行、ワカメ・ヒジキなど海藻の生育不良。
    • 熱帯性の魚種が定着するなど、生態系の南方化。

今後の見通し

この先、黒潮が安定して沿岸に沿って流れ続ければ、今回の長期大蛇行は終息したと判断されます。ただし、黒潮の流路は多くの要因に左右されるため、再発の可能性も否定できません。気象庁や海洋研究機関は引き続き継続的な監視を行っています。





参考リンク

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です