— Drakeら(1999, JAAD)42日間投与試験の解析 —
1. 背景
男性型脱毛症(Androgenetic Alopecia, AGA)は、毛包における**ジヒドロテストステロン(DHT)**の過剰作用によって進行します。
フィナステリドは5α還元酵素II型阻害薬で、テストステロンからDHTへの変換を抑制します。これまでの研究で血清DHTの抑制効果は示されていましたが、頭皮内でのアンドロゲン抑制効果を定量的に評価した大規模試験は本研究が初めてです。
2. 試験デザイン
- 対象:AGA男性 249例
- デザイン:無作為化二重盲検プラセボ対照、多施設試験(米国・カナダ16施設)
- 介入:フィナステリド 0.01, 0.05, 0.2, 1, 5 mg/日 またはプラセボを42日間投与
- 評価項目:
- 頭皮DHT・テストステロン濃度(スカルプバイオプシー)
- 血清DHT・テストステロン・3α-アンドロスタンジオールグルクロニド(3α-diol-G)
- 副作用の発現
3. 結果
3.1 頭皮DHTの変化
- プラセボ:−13%
- フィナステリド0.01 mg:−14.9%
- フィナステリド0.05 mg:−61.6%
- フィナステリド0.2 mg:−56.5%
- フィナステリド1 mg:−64.1%
- フィナステリド5 mg:−69.4%
3.2 血清DHTの変化
- フィナステリド0.05 mg:−49.5%
- フィナステリド0.2 mg:−68.6%
- フィナステリド1 mg:−71.4%
- フィナステリド5 mg:−72.2%
テーブル:フィナステリド用量別アンドロゲン変化率(42日投与)
用量 (mg/日) | 頭皮DHT変化率 | 血清DHT変化率 | 頭皮テストステロン変化率 | 血清3α-diol-G変化率 |
---|---|---|---|---|
プラセボ | −13% | 0% | +3% | −0.1% |
0.01 | −14.9% | 0% | +5% | −15.2% |
0.05 | −61.6% | −49.5% | +27% | −63.3% |
0.2 | −56.5% | −68.6% | +53% | −68.1% |
1.0 | −64.1% | −71.4% | +41% | −74.8% |
5.0 | −69.4% | −72.2% | +30% | −73.6% |
3.3 テストステロンの変化
- 頭皮テストステロン:0.2〜1 mgで最大50%以上上昇
- 血清テストステロン:有意な変化は軽度、最大+10〜20%
3.4 安全性
- 副作用は軽度で、頭痛と性欲低下が報告されたが発現率は低かった(性欲低下2.6〜8.3%)。
- 有害事象による中止は少数例のみ。
4. 考察
- フィナステリドは0.2 mg以上で頭皮および血清DHTを70%前後抑制。
- 1 mgと5 mgの差は小さく、臨床用量が1 mgに設定された合理性を裏付ける。
- 頭皮テストステロンが有意に上昇することから、局所ホルモン環境の変化が毛包改善に寄与している可能性。
- 血清および頭皮の両方のDHTがAGA病態に関与することを示唆。
5. 臨床的意義
- 本試験は、フィナステリド0.2〜1 mgがDHT抑制に十分であることを初めて明確に示した。
- 低用量(0.05 mg以下)は不十分、逆に5 mgは1 mgと比較して抑制効果が大きく変わらない。
- AGA治療における「1 mg標準用量」の科学的根拠を提供する重要な試験である。
参考文献
Drake L, Hordinsky M, Fiedler V, Swinehart J, Unger WP, Cotterill PC, Thiboutot D, Lowe N, Jacobson C, Whiting D, Stieglitz S, Kraus SJ, Griffin EI, Weiss D, Carrington P, Gencheff C, Cole GW, Pariser DM, Epstein ES, Tanaka W, Dallob A, Vandormael K, Geissler L, Waldstreicher J. The effects of finasteride on scalp skin and serum androgen levels in men with androgenetic alopecia. J Am Acad Dermatol. 1999;41(4):550-554. doi:10.1016/S0190-9622(99)80051-6