フィナステリド5 mg/日による閉経後女性型脱毛症治療

— ノルモアンドロジェン閉経後女性における有効性と安全性(Oliveira-Soaresら, 2013) —

1. 背景

女性型脱毛症(Female Pattern Hair Loss: FPHL、またはFAGA)は、男性型脱毛症と異なり原因や治療戦略が複雑で、特に閉経後女性では治療選択肢が限られています。
フィナステリドは5α還元酵素II型阻害薬として男性AGAに広く用いられていますが、女性に対する有効性や適正用量は明確ではありません。
Oliveira-Soaresら(2013)は、臨床的および検査的にアンドロゲン値が正常な閉経後女性を対象に、フィナステリド5 mg/日の効果と安全性を18か月間検証しました。


2. 研究デザイン

  • 対象:閉経後女性40例(全員がノルモアンドロジェン)
  • 投与量:フィナステリド5 mg/日
  • 期間:18か月
  • 評価項目
    • 患者自己評価(高度改善/中等度改善/改善なし)
    • 皮膚科医2名によるグローバルフォト評価(高度改善/中等度改善/改善なし)
    • 年齢別の反応性解析(<60歳、60–70歳、>70歳)
    • 血液検査(肝機能、ホルモン値)による安全性評価

3. 結果

3.1 改善効果

6か月時点の自己評価と医師評価

評価指標高度改善中等度改善改善なし
自己評価22例12例6例
医師評価16例16例8例
  • 改善は6か月時点から確認され、その後12か月、18か月でも持続。
  • 高度改善は特に60歳未満群で多く認められた。

3.2 年齢別反応性

  • <60歳:高度改善率が最も高く(12/20例)、全体の反応性も良好。
  • 60–70歳:中等度改善を含め効果あり(4/13例が高度改善)。
  • >70歳:改善は限定的で、第一選択とする根拠は弱い。

3.3 副作用

副作用発現数コメント
性欲低下4例全例で治療継続可能
肝機能異常1例一過性、継続可能

4. 考察

  • フィナステリド5 mg/日は、閉経後女性FPHL患者において比較的短期間(6か月)で効果を示し、効果は18か月間持続した。
  • 低用量(1〜2.5 mg/日)で十分な効果が得られにくいとする過去報告と比較すると、高用量投与の有効性を裏付ける結果といえる。
  • 高齢患者では反応性が低下する傾向があり、年齢による個別化治療が必要と考えられる。
  • 副作用は軽度かつ可逆的で、安全性プロファイルは許容範囲内。

5. 臨床的意義

  • 本研究は、ノルモアンドロジェン閉経後女性におけるフィナステリド高用量単剤療法の有効性を示した数少ないエビデンス。
  • 実臨床では、60歳未満または閉経後早期の女性での使用を検討する価値がある。
  • 6か月時点で効果が不十分な場合、他剤併用または治療変更を検討すべき。

6. まとめ

  • フィナステリド5 mg/日投与は、閉経後女性型脱毛症において有効性を示し、特に60歳未満で高い改善率が得られた。
  • 効果は6か月以内に現れ、18か月間持続。
  • 副作用は軽度で、治療中止例はなかった。

参考文献

Oliveira-Soares R, Maia e Silva J, Peres Correia M, André MC. Finasteride 5 mg/day treatment of patterned hair loss in normoandrogenetic postmenopausal women. Int J Trichology. 2013;5(1):22–25. doi:10.4103/0974-7753.114709.

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