フィナステリドの男性型脱毛症治療効果と安全性

— Robertsら(1999)多施設二重盲検試験の詳細解析 —

1. 研究概要

Robertsら(1999)は、成人男性の男性型脱毛症(Androgenetic Alopecia, AGA)に対するフィナステリド1 mg/日の有効性と安全性を評価するため、多施設ランダム化二重盲検プラセボ対照試験を実施しました。本研究は米国内複数施設で行われ、24か月間の毛髪数変化、写真評価、患者自己評価、副作用発現率を詳細に検討しています。


2. 試験デザイン

  • 対象:18〜41歳の軽度〜中等度AGA男性
  • 症例数:1,215例(フィナステリド群 607例、プラセボ群 608例)
  • 介入:フィナステリド1 mg/日 vs プラセボ
  • 評価項目
    1. 頭頂部1インチ²領域の毛髪数変化
    2. 専門家パネルによる写真判定
    3. 患者自己評価(発毛・脱毛抑制感)
    4. 副作用発現率(特に性機能関連)

3. 主な結果

毛髪数変化(頭頂部1インチ²領域、平均値)

期間フィナステリド1 mgプラセボ群間差
1年後+86本−21本+107本(p<0.001)
2年後+138本−239本+377本(p<0.001)

写真評価(専門家パネルによる改善率)

期間フィナステリド1 mgプラセボ
1年後48%7%
2年後66%7%

患者自己評価(改善と回答した割合)

評価項目(2年後)フィナステリド1 mgプラセボ
発毛が見られた65%37%
脱毛が減った83%28%

副作用発現率(性機能関連)

副作用フィナステリド1 mgプラセボ
リビドー低下1.8%1.3%
勃起不全1.3%0.7%
射精障害0.8%0.4%
合計2.1%1.5%

4. 臨床的意義

  • フィナステリド1 mg/日は、24か月間の継続投与で毛髪数増加と写真評価・自己評価の改善が有意に持続しました。
  • 性機能関連副作用の発現率は低く、大部分が可逆的でした。
  • 本試験はKaufmanら(1998)の研究結果を裏付けるものであり、AGA治療のエビデンスレベルを高める重要なデータです。

5. まとめ

  • Robertsら(1999)の二重盲検試験は、フィナステリド1 mg/日が2年間にわたり有効かつ安全であることを示した。
  • 写真評価・患者自己評価ともにプラセボを大きく上回る改善率を示した。
  • 性機能副作用は低頻度で、発現しても多くが可逆的であった。
  • 本試験は現在の国際的標準用量(1 mg)設定の重要な根拠のひとつである。

参考文献

Roberts JL, Whiting DA, et al. A multicenter, randomized, placebo-controlled trial of finasteride, a type 2 5α-reductase inhibitor, in men with male pattern hair loss. J Am Acad Dermatol. 1999;41(4):555–563. doi:10.1016/S0190-9622(99)80052-8

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