脂肪吸引におけるトラネキサム酸の使用

脂肪吸引の治療結果や安全性を高めるために出血を抑えるということは最も大切なことのうちの一つです。

脂肪吸引時にトラネキサム酸を使用した多施設、無作為化臨床試験を行った論文を紹介します。

結論としてはトラネキサム酸の静脈内投与は脂肪吸引時の出血を抑制することが示されています。

トラネキサム酸はプラスミンとフィブリンの結合を阻害する作用を有しており、止血効果があるとされ得ています。

私自身も内科で研修している時は「アドトラ」と言いアドナ、トランサミン(トラネキサム酸の商品名)として止血目的によく使用してきました。

止血効果は強くない一方で有害事象も少ない薬として知られています。

この論文ではトラネキサム酸の使用の有無で脂肪吸引術前後のヘモグロビンを比較したものです。

下記は内容です。

バックグラウンド: 

出血は手術中の患者の安全にとって大きな問題であるため、術中の止血は細心の注意を払って行う必要があります。トラネキサム酸は、線溶を阻害し、プラスミノーゲンの 5 つのリジン結合部位をブロックすることによって出血を減少させるリジン合成誘導体です。著者らは、脂肪彫刻術における止血剤としてのトラネキサム酸とプラセボの有効性を比較しています。

方法: 

著者らは、2019 年 1 月から 2020 年 2 月の間に 3 つの形成外科センター (コロンビアとメキシコ) で脂肪彫刻が予定されていた患者を対象に、多施設二重盲検無作為化比較臨床試験を実施しました。141 人の患者が無作為に割り当てられました。静脈内投与(トラネキサム酸 1 g)、皮下投与(トラネキサム酸 1 g)、プラセボ(生理食塩水)の 3 つのグループに分けられます。47 人の患者が各グループに割り当てられました。男性患者は 30 人、女性患者は 111 人でした。主な結果は、グループ間の術後出血量を評価することでした。

結果: 

著者らは、術後 1 日目 ( p = 0.0001) と術後 5 日目 ( p = 0.001)の両方で、静脈内介入群が他の 2 つの群よりもヘモグロビンレベルが高いことが認められました。プラセボ群と皮下介入群の間で、ヘモグロビン値に統計的な差はありませんでした。

結論: 

トラネキサム酸の静脈内投与は、術後の出血を減らすために脂肪吸引術を実施するための優れた治療選択肢です。

注意事項として上記は一つの文献であり、臨床的に絶対的に正しいわけではありません。

引用文献

Hoyos, Alfredo E., et al. “Use of Tranexamic Acid in Liposculpture: A Double-Blind, Multicenter, Randomized Clinical Trial.” Plastic and Reconstructive Surgery 150.3 (2022): 569-577.

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