2024年欧州肥満学会(ECO)で発表されたデータによると、GLP-1薬であるセマグルチド(商品名:Wegovy)は、体重減少だけでなく、心血管系にも有益な効果をもたらすことが確認されました。この試験は、心血管疾患(CVD)を持つ肥満または過体重の患者を対象に行われ、4年間にわたる観察が行われました。
主要結果:
- 体重とウエスト周囲長の減少:
- 参加者は平均で体重の10.2%を減少させ、ウエスト周囲長は7.7 cm減少しました。
- これらの効果は4年間持続しました。
- 心血管イベントの予防:
- セマグルチドを使用したグループでは、心筋梗塞や脳卒中、心臓病による死亡リスクが20%減少しました。
- これは肥満治療薬が心血管イベントを減少させることを示した初の研究です。
研究の詳細:
- 参加者:
- 41カ国から17,604名が参加し、平均年齢は45歳以上で、BMIは27以上の人々が対象でした。
- 参加者の72%が男性でした。
- 投与方法:
- セマグルチドは週1回、最大2.4 mgの用量で皮下注射されました。
- 平均40ヶ月間の試験期間が設定されました。
- 測定項目:
- BMIだけでなく、ウエスト周囲長やウエスト周囲長と身長の比率も測定されました。
- これにより、セマグルチドが中心性の腹部脂肪に及ぼす影響を評価しました。
サブグループ分析:
- 体重減少の効果:
- 女性は男性よりも多くの体重を減少させました。
- ベースラインのBMIが高いほど、体重減少の効果が大きいことが確認されました。
- 心血管利益の独立性:
- セマグルチドによる心血管利益は、ベースラインの肥満度や体重減少の程度に関係なく認められました。
- これにより、体重減少以外のメカニズム(例えば血糖値や血圧の改善、炎症の抑制など)が関与している可能性が示唆されました。
専門家のコメント:
- ナビード・サッター博士(グラスゴー大学):
- セマグルチドの直接的な心血管効果が主要な利益の源であると指摘しつつ、体重減少も重要な要素であると述べています。
- 心血管疾患以外にも、腎臓病や神経疾患への応用が期待されています。
- マーティン・ランドレイ教授(Protas CEO):
- 結果が広範な人々に適用可能であれば、心血管イベントの予防に役立つ可能性があると指摘しています。
- ただし、解析結果の一部には慎重な解釈が必要であると警告しています。
参照
- McCall, B. (2024). Semaglutide CV Benefits Irrespective of Weight Loss: 4-Year SELECT Data. Medscape Medical News.