私の研究論文で得られた知見をご紹介します。この研究は、男性型脱毛症(AGA)の進行と年齢の関係について、日本人男性を対象とした大規模調査から新たな発見をもたらしました。
研究概要
- 対象:東京メモリアルクリニックを2006年から2023年に受診した20〜65歳の男性5372名
- 方法:PhD取得済みの形成外科専門医による評価(各医師は週4日、1日平均30名のAGA患者を5年以上診察)
- 分析:改訂版ノーウッド・ハミルトン分類(NH分類)を用いた進行度評価と年齢関係の統計解析
主な発見
私たちの研究では、NH分類の進行と年齢には明確な関連性があることが示されました:
- NH分類Iの中央年齢は26歳(95%信頼区間:25-27歳)
- 分類が上がるにつれて中央年齢も上昇
- NH分類VIIでは中央年齢が52歳(95%信頼区間:46-61歳)に到達
- 各段階間の進行に要する中央時間は約4.5年
クラスカル・ウォリス検定により、これらの中央年齢の差は統計的に有意であることが確認されました(P<0.0001)。

図1:NH分類別の年齢分布(棒グラフ) この棒グラフは各NH分類の患者中央年齢を示しています。NH分類が1から7へと進むにつれて中央年齢が26歳から52歳へと段階的に上昇していることがわかります。エラーバーは95%信頼区間を表し、右側の表に各値が詳細に記載されています。

図2:NH分類別の年齢分布(バイオリンプロット) バイオリンプロットでは各NH分類の年齢分布をより詳細に表示しています。各「バイオリン」の幅はその年齢の患者数を表し、内部の線は中央値と四分位数を示しています。NH分類が高くなるにつれて年齢分布が上方へシフトするとともに、高いNH分類では年齢の幅が広がり、個人差が大きくなることがわかります。
臨床的意義
私たちの研究結果は、AGAの予測と治療計画に重要な示唆を与えます:
- 進行予測:NH分類の各段階間の進行に約5年を要するという発見は、AGAの自然経過の理解に貢献します。
- 治療反応性の予測:私たちの過去の研究では、治療開始時の年齢が40歳を超えることと高いNH分類が、フィナステリドへの不十分な反応を予測することを示しています。
- 個別化治療:年齢と進行度の関係に基づいた治療アプローチの重要性が本研究から強調されました。
結論
この研究は、AGAの進行と年齢の関連性を明確にしました。特に、NH分類で一段階から次の段階への進行に約5年かかるという発見は、AGAの進行を理解し、個別化された治療計画を立てるのに役立ちます。
本研究の限界として、単一クリニックでの調査であることや視覚的評価に依存している点などがありますが、5372名という大規模なデータにより、AGAの年齢関連進行について貴重な情報を提供できたと考えています。
引用
Fujimaki, Hiroshi, et al. “Age-related progression of androgenetic alopecia: Statistical analysis of 5372 Japanese men.” JAAD international 17 (2024): 84-85.