VISAタッチはなぜSuicaより遅いのか?技術的な違いと海外との比較

最近、買い物でVISAタッチ決済を利用していて「Suicaに比べて反応が遅いな」と感じた方も多いのではないでしょうか。
実際、同じ非接触決済でもSuica(FeliCa方式)とVISAタッチ(NFC Type A/B方式)では反応速度に大きな差があります。

この記事では、その原因を通信方式、処理手順、海外との違い、日本での事情などの観点から、わかりやすく解説します。


反応が遅いのはVISAタッチ?それともSuicaが速すぎる?

まずは体感の違いを簡単に比較してみましょう。

項目Suica(FeliCa)VISAタッチ(NFC Type A/B)
平均応答時間約0.1〜0.2秒(非常に高速)約0.5〜1.5秒(やや遅い)
通信方式FeliCa(ISO 18092)ISO 14443 Type A/B
使用目的交通・電子マネー(プリペイド)クレジット・デビット決済(ポストペイ)
認証方式オフライン完結(残高減算)主にオンライン認証(ネット経由)
主な用途改札通過、コンビニ、電子マネーコンビニ、スーパー、観光施設など

通信方式と処理プロトコルの違い(少し専門的な解説)

SuicaとVISAタッチの速度差の根本的な理由は、「通信方式」と「決済処理の流れ」にあります。

Suica(FeliCa方式)

  • FeliCaは日本のソニーが開発した非接触通信規格で、改札などの高速利用を前提に設計されています。
  • 通信速度は最大424 kbpsで、数フレーム(通信の単位)で完了。
  • 残高がICカード側に記録されており、リーダーはその場で「残高確認→減算」するだけ。
    つまり、オフラインで完結する軽い処理です。

VISAタッチ(NFC Type A/B方式、EMV仕様)

  • NFC Type A/Bは国際標準規格(ISO/IEC 14443)に基づいた通信方式で、欧米を中心に普及。
  • さらにVISAタッチは、EMV(Europay, Mastercard, Visa)というグローバルなクレジットカード決済仕様に準拠しています。
  • EMVの決済では、以下のような複数のステップが必要です:
ステップ説明
暗号化されたトークンの生成毎回異なる認証データ(使い捨てのコード)を生成してセキュリティを確保
カード認証(CDAやDDA)カード自体の正当性を証明するための電子署名方式(DDA: Dynamic Data Authentication、CDA: Combined DDA)
オンライン認証レジ端末がネットワーク経由でカード会社に通信し、承認を得る

これらの処理のため、1秒以内に収めるには技術的に難しくなるというのが現実です。


海外ではなぜVISAタッチが速いの?

興味深いことに、同じVISAタッチでも海外ではもっと高速に動作することがあります。
その理由は、**オフライン認証(オフライン承認)**の活用です。

海外でのオフライン決済とは?

  • 海外(特に欧州やオーストラリアなど)では、一定金額以下の決済ではカード会社への通信を省略する仕組みが使われています。
  • この場合、カードと端末が内部のルール(上限金額、回数など)に基づいて、即時に決済を完了できます。
  • 特にロンドンやシンガポールなどの交通機関では、VISAタッチでSuicaのように高速改札通過が可能です。

ではなぜ日本ではオフラインVISAタッチが普及しないのか?

1. 不正利用に対する慎重さ

日本のクレジットカード会社は、小額でも不正利用を非常に重く見る文化があります。
そのため、「オフラインで承認せずに通してしまう」のはリスクとされ、オンライン認証が基本になっています。

2. 加盟店・カード会社の契約構造が複雑

  • オフライン認証を導入するには、加盟店側の端末設定だけでなく、
  • カード会社側との契約やリスク負担の明確化も必要です(例:不正利用時の責任は誰が持つか)。
  • この体制が日本では整っておらず、導入が進みにくいのが現状です。

3. Suica(FeliCa)は専用設計

  • SuicaはJR東日本が自社システムとして設計しており、初めからオフライン・高速処理前提で作られているため、実現可能。
  • VISAタッチはグローバルな標準仕様の上に乗っているため、個別の最適化が難しいという事情があります。

まとめ

SuicaとVISAタッチの速度差は、使われている技術・処理手順・社会的背景の違いに由来しています。

観点Suica(FeliCa)VISAタッチ(NFC Type A/B)
通信方式FeliCa(ISO 18092)NFC Type A/B(ISO 14443)
処理構造残高確認→減算のみ(軽い)暗号化・カード認証・オンライン認証(重い)
応答速度約0.1秒(体感的に即時)約0.5〜1.5秒(条件により変動)
オフライン処理可能・主流日本ではほぼ不可(海外では普及)
インフラ背景交通ICとして最適化国際決済仕様に準拠

VISAタッチの反応速度がSuicaよりも遅いのは、決して技術的に劣っているからではなく、設計思想と運用目的の違いによるものです。
どちらが優れているというよりも、「目的に応じた最適な技術選択」であることが分かります。


この情報が、日常での非接触決済選びや、決済端末導入を検討している店舗の方々の参考になれば幸いです。

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