ミノキシジルは、1970年代に難治性高血圧の経口薬として最初に導入されました。
日本皮膚科学会のガイドライン(2017年版)では推奨されていませんが、海外では男性型脱毛症、女性型脱毛症への有用性についての報告が多く行われています。
今回はミノキシジルの作用機序を中心に解説していきます。
作用機序について
ミノキシジルの作用機序に関するいくつかの説が存在します。
1つの重要な仮説は、その血管拡張性です。
ミノキシジルはKチャネル開口作用があると言われています。カリウムチャネルを開口させることによって血流を増加させ発毛が促されると言われています。
またミノキシジルは血管新生の作用を有します。
ミノキシジルがヒトの毛髪の真皮乳頭細胞における血管内皮増殖因子mRNAを発現させます。
また毛包を直接刺激するのはミノキシジルの代謝物である硫酸ミノキシジルです。
ミノキシジルから硫酸ミノキシジルへの変換は毛包の下部外側根鞘に存在するスルホトランスフェラーゼ酵素によって触媒されます。
そして、ジヒドロテストステロン(DHT)と同じように、頭皮のスルホトランスフェラーゼのレベルには個人差があります。
そのため、ミノキシジル効き具合には個人差があるということが科学的に言えます。
ミノキシジルはケラチノサイトの老化を遅らせることも大きな役割の一つであるとも考えらます。
ミノキシジルがヘアサイクルに置いて実際に成長期を延長するのか、単に休止期を短縮するのかは、まだ議論の余地があります。
下記はミノキシジルの分子式です。
植毛後のミノキシジル
局所ミノキシジルは、AGAの植毛手術の補助として役立ちます。
周術期に局所ミノキシジルを使用すると、移植後1〜2週間で発生する通常の脱落が防止され、6〜8か月から1〜2か月に再成長する時間が短縮されるとの報告もあります。
脱毛の安定化、成長期の毛髪の数の増加、小型化された次善の毛包の拡大による毛髪の重量と密度の増加、術後休止期脱毛症の減少などの利点が考えられます。
しかしながら、ミノキシジルは血管拡張作用があるため、手術の2-3日前に休薬を行うことが良いとされています。
上記がミノキシジルの大まかな作用機序等についての情報です。
処方する側は作用機序を理解した上で、取り扱う必要があります。
参考文献
Nicole E Rogers and Marc R Avram, Hair Transplantation, Fifth Edition, 2010年, 91-97ページ