薄毛治療の代表としてはフィナステリドやミノキシジルの内服、自毛植毛などの方法があります。
いずれもすごく良い治療法ですが完璧ではありません。また少なからず有害事象が発生することもあります。
薄毛治療で大きな注目を浴びているのが再生医療分野ですが、COVID-19 mRNA ワクチンや昨年ノーベル賞を受賞したCRISPER-Cas9などゲノム分野の発展も凄まじいものです。
今回は昨年Science Advancesで公開された下記の論文を読んだので情報を共有します。
真皮乳頭細胞を3D培養(3Dスフェロイド)したものをマウスに注射したところ通常の平面培養、ミノキシジルと比較して発毛が促されるというものでした。
3D培養と2D培養で何が違う調べた結果、3D培養(3Dスフェロイド)ではmiR-218-5p(マイクロRNA)が多く含まれるということがわかりました。
miR-218-5p→SFRP2をダンレギュレート(タンパク質)→WNT/βカテニン経路アップレギュレート→発毛の可能性が述べられているます。
miR-218-5pの類似物をマウスの皮下に注射しても一定の効果が認められ、miR-218-5p阻害物とでは明らかな差が出たので理論としては間違っていないと述べられています。
この論文の主旨はmiR-218-5pと発毛の関連性についてでした。
ただ注入しただけでは分解されてしまうだけなので大切ことは、miR-218-5pをいかに体内で安定した状態で効果が発揮できるかです。
一般論として注入されたRNAは免疫反応により分解されますが、ウリジン(U)をシュードウリジン(Ψ)に変換されることで免疫反応を回避し大量にタンパク質を生成することを可能にしています。
この技術はCOVID-19 mRNA ワクチンに実臨床で応用されています。
私は遺伝子学の専門ではないのでmiR-218-5pに対してこの技術が応用できるのかわかりませんが、ゲノム領域の発展は目覚ましいのです。
今回の報告は薄毛のゲノム治療に関して大きな一歩になると考えます。